浸透性殺虫剤は、他の農薬のように処理された枝葉の表面に付着せず、植物に取り込まれ、枝や葉、幹や根、花粉や花蜜など全ての組織に運ばれる。
その代表が、ネオニコチノイド系殺虫剤(ネオニコ)とフィプロニルで、神経毒の浸透性殺虫剤だ。これらは1990年代から開発され、商品化された。
ネオニコを含む製剤は、種子コーティングや土壌潅注によって根に施用されたり、作物の枝葉に散布されたりする。殺虫毒は、土壌や植物の中で数ヶ月から数年もの間その活性を維持し、作物を生育期間じゅう保護する。
ネオニコは、無脊椎動物の情報処理能力に作用し、脊椎動物とは異なる様式で特定の神経経路に影響する。これが、ネオニコが何にでも効く殺虫剤として人気が高く、ヒトを含む脊椎動物に対し直接的な毒性が低いと見なされる理由だ。
浸透性殺虫剤は、世界的に最も広く使われる殺虫剤となり、現時点での世界市場の占有率は約40%と見積もられる。一般的な化合物は、アセタミプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、イミダクロプリド、ニテンピラム、チアクロプリド、チアメトキサム、及びフィプロニルで、2011年の世界売り上げは26億ドルを越す。
種子処理の市場は、もっと急速に拡大し、1990年代の1.6億ユーロから、2008年には9.6億ユーロに増加し、種子処理の世界全体での売り上げの80%をネオニコが占めるようになった。
ネオニコは、極めて低い用量でも有害だ。ネオニコは、土壌や水に残留し、平均して何ヶ月もの間その場に滞留し、その結果、無脊椎動物などの非標的種は、持続的かつ慢性的な曝露を受ける。ネオニコは、比較的水溶性が高いという理由で、水生生物の生息地に容易に流出する。蜂群崩壊症候群がネオニコと関連するという懸念が高まり、EU諸国ではネオニコの使用が制限されるに至った。他の非標的種へのネオニコの影響への懸念もここ数年で高まっている。